飛ばさぬ若者 死亡事故激減
「草食系」運転が寄与?
速度違反主因 10年で8割減
無謀なスピードで運転する若者による死亡交通事故が激減している。16〜24歳が運転した死亡事故で、最高速度違反(スピード違反)が主因になったケースは2009年で120件と10年前の5分の1以下の水準。09年に57年ぶりに5千人を下回った死亡数減少の一因となった。ゲームなどに熱中する「草食系」の運転は、交通安全にプラスになっているようだ。
警察庁によると、原付きバイクと自動車を運転中の16〜24歳による死亡交通事故は09年に715件。このうち、スピード違反を主因とする事故は120件で、1999年(628件)と比べると81%減った。事故全体も減少傾向にあるが、漫然運転(49%減)、脇見運転(58%減)などほかの主要な原因と比べて減少率の大きさが目立つ。
統計が残る86年以降では、ピークだった90年(1609件)のわずか7%の水準にまで激減。かつては法令違反別の分類でも突出して多く、99年は16〜24歳による死亡事故全体の30%を占めたが、09年は17%まで低下した。
全年齢層で、スピード違反が主因となった死亡事故は09年に328件。99年より1000件余り減ったが、そのほぼ半分を16〜24歳が占めた。
09年の死亡事故で、衝突する直前にどの程度のスピードを出していたかの分析でも、16〜24歳は時速80キロを超えていた事故が99年の4分の1に減少。交通事故の取り締まりでは、09年のスピード違反は19歳以下が2年前より13.4%減り、減少率は20〜64歳(6.5%)の約2倍だった。
政府は01年施行の改正刑法で「危険運転致死傷罪」を新設し、酒酔い運転や無謀な速度による悪質な交通事故を厳罰化。しかし、スピード違反を主因とする死亡交通事故はそれ以前から減っており、厳罰化だけでは説明できない。
若者がスピードを出さなくなったことを、社会学者の山田昌弘・中央大教授は「最近の若者、特に男性の内にこもる傾向の一つの現れ」とみる。
「かつてはむしゃくしゃしたら外で車を飛ばして発散し、仲間とドライブする機会なども多かったが、今は家でパソコンやゲームをしている。」インターネットや携帯電話の発達などが背景にある、と分析している。

興味の対象 車は17位 大学生
スピードを求めなくなった若者像は、車への関心や購入意欲をめぐる調査結果からも浮かび上がる。
日本自動車工業会(自工会)が2008年11月、全国の大学生1000人と20〜30代、40〜50代の元大学生300人ずつに聞いた調査によると、現役の大学生が興味・関心を持っている製品・サービスの1位はパソコン(62.1%)。ファッションや携帯音楽プレーヤー、通信機器などが続き、自動車は22.8%で17位だった。
好きな自動車のタイプでも、スポーツは18.8%と3位。コンパクト(33.3%)とセダン(24.8%)に及ばず、軽自動車(17.7%)とほぼ同じ水準だった。スポーツタイプへの好感度は、学生時代の意識を聞いた40〜50代が32.0%、20〜30代が27.3%で、最近の学生ほど好感度が低くなっている。